

人に、今どき何故かと聞かれたから、面倒だから「別段、さしたる理由も無いぞな、もし」と答えてやった。
古い文庫本だ。
数行読んでみた。
文字が小さい。
が、文体が簡潔で気持ちがいい。
坊ちゃんのバカみたく真っ直ぐな性格が滲み出ている。
この無鉄砲さは気に入った。
然し、今の時代、坊ちゃんのようにはなかなか生きられぬ。
世知辛い世の中になってしまったものだ。
計算高く要領のよい、赤シャツみたいな奴が増えているそうだ。
なんとも気味が悪い。
然し、よくよく考えてみると、おれも赤シャツみたいなもんだ。
女の腐ったような奴と言われたこともある。
自分の利益を考えずに真っ直ぐ矢のように突き進んでいくことなど、さっぱりだ。
だから、坊ちゃんの無鉄砲ぶりには憧れる。
憧れるが、隣の青く見える芝生と思って放っておいた。
自分を変えようと思っても、大儀なだけだ。
無論、世間も皆、赤シャツだから、大して困ることもない。
この世は、しみったれの卑怯者の溜まり場だ。
まったく、馬鹿々々しい。

